This Archive : 2010年02月

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2010.02.02 *Tue

Secret Garden14

二人の兵士は塔の地下にある広間の重い扉を閉め、踵を返すと
廊下に置いてあったランプを持って、ゆっくりと階段の方へ
移動をしながら話し始めた。


「一応城にも報告はした方がいいだろうか」
「いや、そこまでの必要はないだろう。所持品も問題無しだし、
場所は地下だ。仮に脱走するのにどこかに穴を掘るとしても、
この塔の周囲は硬い岩盤だから、火薬で爆破でもしない限り抜け
道なんて作るのは無理だろう。手作業で掘ったとしたら、それこそ
何年かかるかわからないし、それだったら手がマメだらけになって
るはずだから、手を見ればすぐに判る。あの3人のようにマメひと
つない手ではないさ」

「そうだよな。それにあの格好・・・普通脱走するのにドレスやら
正装やらなんて着ないよな。普段着てるものの方が断然動きやすいし」
「うむ。常識ある人ならば、もっと動きやすくて闇に溶け込めるような色の
服を着るだろう」
「うんうん、常識ある人なら・・・・


そう口にした兵士達の脳裏にチラリとシェリルの顔が浮かぶ・・・。


「・・・やっぱり一応報告だけしておくか」
「・・・そうだな」


二人は顔を合わせると大きくため息を吐いた。


あの3人を見張り、脱走や妙な真似をさせないこと。
外部から不審者が侵入するのを防ぐこと。
それが塔の見張りとしての仕事だ。
だが、何かが心に躊躇いを生む。

デイジー女王のことは国中みんなが敬愛している。

別に悪政を強いるわけでもなく、国を愛し大事にしている素晴ら
しい女王。
だが罪のないジョーカーやシェリルを死んだように見せかけ、
陰で幽閉している女王。

偽りの葬儀が行われた時には、国民はそれは深く嘆き悲しんだ。
先代のグレイス女王の逝去から立て続けの悲しみ・・・国民に
愛されていた愛らしい小さな兄妹の死。
そのせいで国は一時期重く沈んでいたが現女王がとても頑張った
おかげで国は明るい笑顔を取り戻していた。
その懸命な姿勢が高く評価されたおかげで、国内には一度だって
内乱が起こったり、女王に反旗を翻す等という者はでなかった。

もしそこで、あの二人がそのまま暮らしていたとしたら・・・
現在この国はおそらく荒れていたかもしれない・・・。

息子に国を譲りたい一心のデイジー女王、先女王の忘れ形見の
王位継承権第一位と第二位をもつ二人。

そこに派閥が生まれ、争いの元となるのは誰が考えても理解
できるだろう。
そうなっていけば戦がおこり、この国はどんどん荒廃していって
しまうだろうことはとても安易に想像がつく。

もちろんデイジー女王の中にもその恐怖は心底あったので、
そうなる前にと偽の兄妹死去を結論として出したのだ。

おかげで今、国民はあの二人がここでどんな生活をしているの
かも知らず、憂うこともなく、幸せにくらせている。

それはここを衛る兵士達にとっても喜ばしいこと・・・。
けれど・・・自分達は真実を知っている。
国民が笑えるようになった陰で、この幽閉された塔のなかで
ひっそりと咲く2つの薔薇を。

簡単に言ってしまえば、自分達だってみんなの幸せの為だから
・・・と自分に言い聞かせて塔の中に隠される重大な秘密を隠蔽
する手伝いをしているようなものだから、今更女王を裏切って、
国を荒らして・・・などという行為はできようはずがない。

それでもあの二人に触れるたびに、神に祈りたい気分になってくるのだ。


「なぁ・・・知ってるか?」
「ん?」


先に階段を上り始めた兵士が顔をまっすぐに前方へ向けたまま、
声を潜めて呟いた。


「ジョーカー様もシェリル様も・・・必要以上に俺達に関わって
こない理由」
「人見知り・・・とかじゃないよな」
「Gさんに前にちらっと聞いたことがあってさ、『あのお二方は
「自分達にもし兵士さんたちが必要以上に関わってしまって、
女王の怒りをかうことがあってはいけない」ととても心配して
おられるのです。だからどうぞ、懐かないご様子のお二人をお嫌い
にならないでさしあげてください』ってさ・・・・」
「そっか・・・・窮地に立たされても、優しさを忘れない方たちなんだな」
「「・・・・・・」」


黙り込んだ二人の兵士。
恐らく胸中は非常に似た感情が渦を巻いているだろう。


「・・・なぁ、アルフ」
「どうしたヴェタ?珍しくその名前で呼ぶなんて」
「俺教会の神父の前では話すことができない懺悔があるんだ。
今ここで懺悔してもいいかな」
「・・・それを俺に聞けと?」
「お前にしか言えない懺悔なんだ」
「・・・しょうがねぇな・・・。言ってみなその懺悔ってやつを」


アルフと呼ばれた兵士が近くの壁に凭れ掛かり目を閉じるとヴェタ
と呼ばれた兵士が床に膝をつき、手を胸の前で組むと、口を開いた。


「俺はもうここまで善悪の区別をつけれないままに、この仕事を請け
負ってやってきたが、本心を今いっても許されるのなら・・・・
あの優しく悲しい兄妹と、それをずっと陰ながら傍について守ってきた
Gさまにも・・・逃げる場所があるのなら、いっそ無事に逃げてほしいと
思っている・・・・これが本心だ」
「・・・・・」
「すまんな、こんな懺悔をきかせてしまって。もう絶対口にはしないから、
君の胸の内にしまっておいてくれ」
「ああ、そんな心配はいらんぞ。・・・実は俺もお前と同じ気持ちで今まで
ずっとこの塔を衛る兵士をしていたんだ」
「!?なんだ、お前も同じ気持ちだったのか」
「・・・・かといって俺らが手引きをするわけにはいかないがな」
「・・・お城に知らせには行こう。ただしもう深夜なので緊急の伝書鳩は
使えない。見回りの兵士も今夜は城に借り出されていて、そいつらが戻る
までは俺とお前の二人だけしかいない。こういう場合にはどうするんだっけ?
マニュアルでは」
「確か、緊急以外のことであれば交代の要員が到着するまでは、そのまま
待機せよ。だったよな」
「んじゃ急ぐこともないってことだから、とりあえず伝書鳩だけとばして
おけば問題ないだろう。まぁ・・・夜だから着くのは朝になると思うが」



二人で段取りを気にしつつ、ニヤリと笑いあう。


「今日仕事があがったら一緒に飲みにいこうぜ!」
「ああ、お前とならいい酒が飲めそうだ」


二人の兵士はお互いの肩をバンバンと力強く叩き、励ましあった。






☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆ ☆゚・*:.。.☆゚・*:.。.☆ ☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆


すみません、なんか体調悪化でぐるんぐるんしております。
今回はちょっと2人の兵士さんにスポットをあててみました。
無駄に長くなってしまってごめんなさい;


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